木を見る西洋人 森を見る東洋人-思考の違いはいかにして生まれるか by リチャード・ニスベット
この本は西洋人と東洋人の考え方の違いを見事にあぶり出している本です。
私自身、いろいろな疑問を感じていました。
例えば、
・英会話の授業中にアメリカ人の先生が、どうしてここまで物事を単純化できるのか?
・英語は論理的な言語なのに、訳の分からない論理だとか詭弁がまかり通ることが結構あるのはなぜか?
(例えばアメリカの裁判で変な判決が出るとか)
・どうしてアメリカは「悪の枢軸」みたいに、世界を善と悪の2つに分けて考えるのか?
そういった疑問が、この本のお陰で解決しました。
西洋人は、個人主義で個々の人間を尊重するのと同じように、物事を捉えるときに個々の対象に注目するのだそうです。
東洋人は、集団主義で全体の調和を尊重するのと同じように、物事を捉えるときには背景や文脈などに注目して、その中で個々の対象を捉えると。
この考え方の違いは例えば医学とかもそうですよね。
西洋医学では手術をして、悪いところは切ってしまいます。
東洋医学では漢方薬や針などを使い、体全体のバランスや気の流れを直そうとします。
すごく納得するところが多かったのですが、本書では、こういった違いを様々な研究を通じて明らかにしようとします。
例えば、
・西洋人は分析的、東洋人は包括的
・西洋人は安定を好み、東洋人は変化を好む。
・西洋人はカテゴリーを好み、東洋人は関係を強調する。
・矛盾に出合うと西洋人はどちらが正しいかを明らかにしようとし、東洋人は中庸を求める。
などなど・・・
まとめてしまうと単純に聞こえますが、ものすごく深いです。
とても興味深い研究結果が満載で、いろんな気づきが得られます。
ふと思ったのですが
「東洋人が関係を強調する」
ことは例えば言語にも現れますよね。
この本では I つまり一人称に当たる言葉について
男性が大学の仲間とおしゃべりするときなら「僕」または「俺」を使う。
父親が子どもに対して話すときには「お父さん」と言う。
と日本語について紹介しています。(英語でなんて説明しているんでしょうね、特に僕と俺)
ほんの一例ですが
・人間だと「ご飯」、動物だと「餌」
・頭だと「かぶる」、足だと「履く」
のように言葉を使い分けるのも関係を意識しているからこそですよね。
英語だとどちらも food で put on だ、というのは改めて考えてみると興味深くありませんか?
英語を勉強するということは異文化に触れることです。
例えば西洋人の親しい友人がいる人、英語で交渉をする機会が多い人、西洋人の友だちを作りたい人などなど、是非この本はいろんな人に読んでいただきたいなぁと思います。
木を見る西洋人 森を見る東洋人-思考の違いはいかにして生まれるか