「身に付けているものを外す」「脱ぐ」という動作は
英語では通常 take off で表現しますよね。
take の代わりに pull や slip、kick などを使っても表現できます。
(前回ご紹介した「着る」でも pull や slip が使えましたね。)
ところで、「脱ぐ」という表現になぜ take という言葉を使うのか、
考えたことはおありですか?
take という動詞には「手を使う」ことが根底にあります。
手を使って、身に付けているものを離す(offの状態にする)から「脱ぐ」ことになるのです。
では、take でない動詞を使った場合には「手を使わない」のでしょうか?
いいえ、特にそうとは限りません。
使わない場合もありますが、同じ動作でも違う部分に焦点を当てている場合もあります。
では pull off、slip off、kick off がどのような動作・ニュアンスになるのか、順番に見ていきましょう。
<pull off>
pull off は、前回 pull on について見てきた皆さんならもうおわかりの通り、「引っ張って脱ぐ」動作を表します。
Googleで検索をしたところ、次のような用例が出てきました。
“Pull off your boots or work shoes and slip into the soothing comfort of a pair of the ACG Air Moc II.”
(ブーツや仕事の靴を脱いで、楽で快適なAir Moc IIに履き替えましょう!)
“Joe laughed and pulled off his coat. The pistol hung low over his ribs.”
(ジョーは笑ってコートを脱いだ。脇に拳銃がぶら下がっていた。)
“Then he pulled off his ring of gold.”
(そして彼は金の指輪を外した。)
ほら、引っ張っている感じがしますよね。
“At 27 months, your child will probably be able to pull off his shoes as well.”
(2歳ちょっとにもなれば、あなたのお子さんも多分同じように靴を脱げるようになりますよ。)
2歳の子供が不器用に靴を引っ張っている感じがしてきますよね。
“Resist the urge to pull off your skates first…”
(さっさとスケート靴を脱ぎたいでしょうが、それに耐えて下さい・・・)
「こんなもん!」と言いながらスケート靴を脱いでしまいたい衝動が伝わって来ませんか?(笑)
<slip off>
slip off では「滑らかに、サッと脱ぐ」感じが表れます。
“She slipped off her jacket.”
(彼女は上着を脱いだ。)
“I had time to slip off my jacket and helmet before running into checkpoints.”
(チェックポイントに着くまでに上着とヘルメットを脱ぐ時間があった。)
“Your best option is to slip off the coat.”
(コートを脱ぐのが一番良いよ。)
<kick off>
kick は「蹴る」という動作ですから、足を振るなどして(ともすればぞんざいに)履き物を脱いでいる姿が想像できます。
sandals や slippers などといった言葉との組み合わせでよく使われるのも納得がいきますよね。
“I love the summer! That’s when it’s time to kick off your shoes, get your pedicures, and show off your feet.”
(私は夏が大好き!夏は靴を脱ぎ捨てて、ペディキュアを塗って、足を見せられる時期だから。)
“They sat down on the mossy bank, kicked off their dusty sandals, and stepped carefully into the water.”
(彼らは苔だらけの岸に腰掛け、汚れたサンダルを脱いでから、ゆっくりと水の中に足を踏み入れた。)
次の例なんて明らかに「ぞんざい」な脱ぎ方ですよ。
“I kicked off my sandals, put my head against a pillow and the window, and quickly drifted off to sleep.”
(私はサンダルを脱ぎ捨て、枕に頭を乗せて窓に向かって寝、すぐに眠りに落ちた。)
皆さんも、下のような感じでいろいろな単語を入れてGoogle検索してみて下さい。
ただし、「脱ぐ」という言葉だけに、ちょっとアダルトな表現が出てくる場合もありますので、ご注意下さい(笑)。
「脱ぐ」という表現は take off だけではないことがわかって頂けましたでしょうか。
では次の例を見て下さい。
Sean took off his jacket and his shoes.
Sean pulled off his jacket and kicked off his shoes.
どちらも日本語にしてしまえば
「ショーンは上着と靴を脱いだ。」
ですが、後者の文の方が豊かなイメージが湧いてくる筈です。
前回と今回取り上げたもの以外にも「着る」「脱ぐ」場合に使える動詞はいろいろとある筈です。
興味のある方は是非Google検索を使って調べてみて下さいね。
***ご注意***
前回と今回取り上げた表現の中で、
slip on と kick off は他の意味で使われることが多いです。
「slip on ~」は「~で滑る」という意味にもなり得ますし、
「kick off」はサッカーの試合開始(キックオフ)や
そこから転じた「開始する」の意味の場合もあります。
Google検索の結果を見るときにはご注意下さいね。
例えば “slipped on a shirt” という表現が出てきたときに
「シャツで滑った」可能性は否定できませんので。