AIによる機械翻訳で英語を学ぶ必要がなくなるのか?(ゆりやんレトリィバァのAGT出演が教えてくれる翻訳の限界)

 

...AIによる機械翻訳で英語を学ぶ必要がなくなるのか?(ゆりやんレトリィバァのAGT出演が教えてくれる翻訳の限界)


AIによる機械翻訳の限界を知ってください

こんにちは、イングリッシュ・ドクターの西澤 ロイです。
 
Google翻訳も精度が次第に高まっていますし、
みらい翻訳のような、質が高いとされる
機械翻訳のサービスも登場してきています。
 
そんな中、自分で英語を学ぶ必要は、
もうなくなるのではないか・・・?
 
そういう期待を胸に抱いている方も
少なくないと思います。
 
先日、Yahoo!ニュースにも掲載されたこちらの記事
「自動翻訳で英語学習は不要になるの?
――AIによる機械翻訳の限界を知っておこう」

において、AIには取って代わることのできないものがある
というお話をしていますので、興味がある方は
ぜひチェックしてみてください。
 

翻訳が本質的に抱える問題点

先日、芸人の「ゆりやんレトリィバァ」さんが
アメリカの人気オーディション番組、
America’s Got Talent(AGT)に出演し、
その動画が話題になりました。
 
ゆりやんレトリィバァさんは、当然ながら
審査員を相手に英語で話しているわけです。
 
その動画がAGTの公式動画としてUPされました。
それが以下です。

 
しかし、やり取りが英語ですから、
日本語字幕が欲しい・・・ということで、
それをつけた動画をUPする人が現れました。
 
それが以下です。

 
この動画には
「America’s got talentのゆりやんレトリィバァ
出演シーンに字幕を付けました。誤訳もあるかも
しれませんがよろしくお願いします」
というコメントがついていますが、
これが実は、翻訳の本質を表しているのです。
 

翻訳の限界とは?

個人的には、上の動画についている字幕は
結構うまいなと思います。
 
例えば、ゆりやんレトリィバァさんが
I only respect three people in the world.
と言った後のシーンで、
(字幕は「尊敬している人は3人だけです」)
 
尊敬対象の3人目として、自分が出てくることを期待した
サイモンが「and…(それで?)」と言ったところに
「俺?」
 
さらに、ゆりやんレトリィバァさんが
「Julianne(ジュリアンです)」と答えたところには
「その隣の人です」
 
こういった字幕のつけ方は、非常にうまいと
思います。機械翻訳には永遠にたどり着けない
素晴らしい翻訳だと思います。
 

誤訳にご注意ください

ただし、この字幕にも、いくつか誤訳があります。
 
例えば、パフォーマンス後のやり取りで
「君の普段の動きをマネされてると
思ったからブザーを押したんだろ?」
とありますが、実際の英語は、
Julianne, you gave her a buzzer when every move
you just watched was inspired by you.
であり、正しく訳すならば
「君は×を押したけど、今見たダンスの全ての
動きはあなたに影響を受けているんだよ」
という、やや責めるような意味合いでしょう。
 
また、一番最後で、ゆりやんレトリィバァさんが
ダンスの指導を受けるシーンで
「腰を“指”の方へ」
とありますが、これは明らかな誤訳です。
 
finger(指)ではなく figure eight(数字の8)
であり、腰を8の字を描くように回して・・・
ということを言っているのです。
 
なお、私は別に、訳の間違いを指摘したいワケ
ではありません。
 
そうではなく、このような誤訳を含んでいるかもしれない
日本語訳を、盲目的に信じるしかないのが、
翻訳というものの本質
だと言いたいのです。
 
そして、その翻訳を、人間だろうと機械だろうと、
誰が行なおうが、「翻訳に依存する」のか、
それとも「自力で分かるようになる」のか、
という根本的な二択が存在しています。
 
英語を誰かに訳してもらっていたら、その相手を
盲目的に信じるしかなくなるのです……。

あとは「質」の問題

上の日本語字幕バージョンは、ちょっと誤訳が
含まれてはいますが、充分なクオリティがありますので
多くの人に喜ばれているわけです。
 
とりあえず、間違いがあろうと、大意がつかめれば
いい、という人もいます。
 
できるだけ正確に理解したい、というこだわりが
ある人もいるでしょう。
 
そこはもう個人の選択ですので、「良し悪し」の
問題ではなく、「好み」の問題かもしれません。
 
ただし、一定以上の「質」を求めるのであれば、
自分の力で英語を理解できた方が良いと言えます。
 
しかし、上の日本語訳がついた動画もそうですし、
AIが自動翻訳してくれた場合もそうですが、
「元の英語が何だったのか」が分かりません。
 
さきほど「翻訳に依存」と書きましたように、
日本語訳を求めてしまうと、英語学習には
非常になりづらいわけです。
 
(ちなみに、YouTubeでも英語字幕を自動的に
生成してくれていますが、精度としては
7割前後ではないでしょうか)
 
ですから私は、英語全文の文字起こしと、
参考訳をつけるという形で、記事を書きました。
(この記事の末尾からリンクしています)

英語を学ぶ「醍醐味」を知っていますか?

私自身は、英語なのであれば、自分の力で理解
できるようになりたいと思ってやってきました。
 
それは、誰かが翻訳してもらって日本語で
理解するのではなく、英語を英語のまま分かる
ことが、英語を学ぶ醍醐味の1つだと思うからです。
 
日本語には訳せないものってたくさんあります。
単語の意味。細かなニュアンス。息遣い。
ダブルミーニング。
 
例えば、日本語で
「私は10歳です」
「僕は10歳」
「俺は10歳だ」
と言ったならば、全部ニュアンスが違うでしょう。
 
しかし、英語に訳したならば、全て
「I’m 10 years old.」
にしかなりません。これが英語には訳せない
日本語のニュアンスの例ですね。
 
直訳してしまうと、どうしても「味気ない」感じに
なってしまわざるを得ないんですよ。
 
私は教育者ですので、
・英語を学んでいる方
・英語に興味がある方
には、英語学習の醍醐味をお伝えしたいのです。
 
だからこそ、英語を英語のまま分かるお手伝いを
したいと思っています。
 
もちろん、いきなり聞き取れるようには
なりませんから、遠い道のりに感じるかも
しれませんが、だからこそ私は、文字起こしを
提供しているんですよ。
 
文字で読むことができれば、ハードルが
かなり下がりますからね。
 
そしてぜひ、英語だと「こういう表現をするんだ!」
という驚きなども感じていただけたら嬉しいですね。
 
全文の文字起こしは、英語を学ぶ全ての方への
私ロイからのプレゼントです。
 
↓↓↓
 

ゆりやんレトリィバァの英語力を分析!(AGTオーディションの文字起こしあり)


  • この記事を書いた人

    イングリッシュ・ドクター 西澤ロイ

    イングリッシュ・ドクター(英語のやさしい“お医者”さん)。
    英語が上達しない原因となっている「英語病」をなおす専門家。
    TOEIC満点(990点)、英検は4級。獨協大学英語学科を卒業。言語学を専攻。

    著書に「頑張らない英語」シリーズ(あさ出版)、新刊『英語学習のつまずき50の処方箋』(ディスカヴァー21)など、計11冊で累計17万部を突破(書籍の一覧はこちら
    日本人が「英語ができない時代」を終わらせることを目指して日々活動中。