Q.医療者が患者の訴えを聞く、という文脈で、
listen for stories
listen to stories
の二つの聞き方のうち、前者がよりよい聞き手の姿として紹介されていました。
listen for はどのようにニュアンスが違うのでしょうか?
A.
まず listen の意味から確認しましょう。
listen は「耳を傾け」て聞こうとする動作を表します。
そして、to が耳を向ける方向を表しています。
listen to the radio(ラジオを聞く)という表現がよく使われますが、
それはラジオの方向に耳を向けているからです。
では、listen for のように、前置詞 for を使うとどのように
ニュアンスが変わってくるのでしょうか?
前置詞の for は、例えば以下のような使い方がありますが、
・look for(探す)
・search for(探す)
「探す」ようなニュアンスをもつ場合があります。
違う言い方をするなら、for の後に来る「モノ」は
見つかっていなかったり、その場になかったりする、
ということです。
look for the car key(車の鍵を探す)と言えば
探しているわけですから「車の鍵」はその場にはありません。
wait for(待つ)なども同様ですね。
その場にいない人のことを待つわけです。
さて、もうお分かりでしょうか。
listen for は「聞こえないかもしれない音を、
聞こえないだろうか、と耳を傾ける/澄ます」
というニュアンスを持っているのです。
listen to stories と言えば、患者さんが話してくれることに耳を傾けて聞く、
ということで、普通の聞き方ですよね。
しかし、listen for stories だと、患者さんが自分からは
話さないことだったり、自分では気づいていないことだったり、
そんな話にも注意して、耳を澄ませながら話を聞いているような
そんなニュアンスになるのです。
だから、後者の listen for の方が、より良い聞き手になる
ということなんですね。