新しいことを学べる人・学べない人

 

...新しいことを学べる人・学べない人


私は今までに3,000人以上の英語学習者に
英会話やリスニングを教えてきました。

その経験から思うのですが、世の中には、
新しいことを学べる人と、学べない人がいます。

一体、何が違うのでしょうか?

どちらの人も同じように時間やお金を投資して学んでいるはずなのに、
なぜうまく行かない人がいるのでしょうか?

ちょっとまとめてみたいと思います。

まず、「新しいことを学べない人」には2パターンあるように思います。

 

<パターン1>

「分からないことがあっても、恥ずかしくて質問できない。」

「知らないことやできないことをダメだと思っている。」

<パターン2>

「自分が“理解できるもの”、“理解できる形”でしか
物事を受け入れ(られ)ない」

「自分の考えの正しさを(無意識に)証明しようとしている。」

そして、この2パターンの両方に当てはまる、という方も
見ていて少なくありません。

   ***

それに対して、「新しいことを学べる人」にはどんな特徴があるでしょうか?

以前、脳科学者の茂木健一郎さんが『思考の補助線』という本の中で
こんなことを書いていらっしゃいました(引用します)。

 

一つのことが分かると、

十のことが分からなくなる。

十わかれば、

百のことがわからなくなる。

わかったことと、

わからないことの「割合」は、

いつまで経っても同じことである。

(『思考の補助線』20ページより、茂木健一郎著、ちくま新書)

 

つまり、知らないものは永遠にあり続け、
自分が学べば学ぶだけ、世の中(宇宙)が広がるのだと――。

私ロイはこの『思考の補助線』を読んで衝撃を受けました。

蛍光ペンで線を引きまくったのを覚えています。

 

さて、ここで大切なポイントは、学びというのは、
ただ「知識が増える」ということではない、ということです。

むしろ、「気づき」によって何かが変質するのです。

 

今までの自分の考え方が間違っていた。

いや、「間違い」は言い過ぎかもしれません。

今までの自分の考え方は小さかった。

それを脱ぎ捨てて、より大きな視点を手に入れることなのです。

 

ただし、過去の考え方を引きずったままだと、
新たな真実を受け入れることができません。

ここで、受け入れを邪魔するような考えが
出てくるようなこともあるでしょう。

例えば・・・

「知らないことが永遠にあり続けるなら、
一体何のために知るの?」

「ムダな努力をしているんじゃないか?」

そんな風に思ってしまうこともあるかもしれません。

 

大切なのは、「古い考え(方)を手離す」こと。

新しい考え方を手に入れる前に、
古い考え方を手離す必要があります。

 

なお、捨てる(無くしてしまう)のではありません。

「手離す」だけであり、必要な時には使えばいいのですから。

 

今まではそれが唯一の考え方で、無意識にいつもそれを
使っていた、という場合もあるでしょう。

そうすると、それ以外の考え方を知らなかったから、
それ以外の経験がないために、手離すのには勇気がいる
こともあります。

 

今までたくさん学んできたことの価値がなくなってしまう
気がして、恐怖を感じることもあるかもしれません。

テストで高得点を取ったことや、ホメられた経験、
自分の学歴などの成功体験を否定することになりそうで、
新しい考え方がなかなか受け入れづらいかもしれません。

でもそれも、「手離す」ことを「捨て去る」ことと
混同してしまっているから。

 

それに、手離せなかったらダメ、というわけでもありません。

手離したくない自分のことも大切にするべきです。

ただ、新しいことを本当に学び、身に付けたいのであれば
(それが本当の望みなのであれば)
手離すという作業が必要になります。

「出入口」「呼吸」などの漢字が表しているように、
まずは「出る」ことがないと「入る」ことができませんから。

 

私たちは世の中の一部しか知ることができず、
そして、永遠に知らないものがあり続けます。

「知らない」からこそ生まれるのが「好奇心」であり、
「できない」からこそ「挑戦」をすることができます。

もし逆に、この宇宙のすべてを知っていて、全てができてしまうなら、
それは退屈この上ないと思うんです。

「知らない」「できない」というスタートラインに立っている
ことが、素晴らしい祝福なんじゃないでしょうかね。

⇒ 続き:新しいことを学べる人・学べない人(2)英語学習編


  • この記事を書いた人

    イングリッシュ・ドクター 西澤ロイ

    イングリッシュ・ドクター(英語のやさしい“お医者”さん)。
    英語が上達しない原因となっている「英語病」をなおす専門家。
    TOEIC満点(990点)、英検は4級。獨協大学英語学科を卒業。言語学を専攻。

    著書に「頑張らない英語」シリーズ(あさ出版)、新刊『英語学習のつまずき50の処方箋』(ディスカヴァー21)など、計11冊で累計17万部を突破(書籍の一覧はこちら
    日本人が「英語ができない時代」を終わらせることを目指して日々活動中。