スティーブン・ホーキング博士の訃報と、私の宇宙観

 

...スティーブン・ホーキング博士の訃報と、私の宇宙観


こんにちは、イングリッシュ・ドクターの西澤 ロイです。
 
車椅子の天才物理学者、スティーブン・ホーキング
(Steven Hawking)博士の訃報が届きました。。。
 
ただただご冥福をお祈りするしかないのですが、
博士が愛した宇宙について、ちょっと語ってみたく
なりました(長文注意です)。
 
***
 
私が初めて、宇宙のことを考え始めたのは、
大学3年生の時だったと思います。
 
それまでは、言語学に夢中で、英語ばかり勉強し、
部活動では弓道に燃えていました。
 
私の通っていた獨協大学では、3~4年次に
「ゼミ」が必修となっており、私ロイは
社会言語学について学ぶ、アイルランド人教授の
H先生のゼミに入ることができたのです。
 
H先生は英語ネイティブですから、普段の授業は
全て英語。1学年12人いるうちの半数以上が
帰国子女という環境でした。
 
さて、恩師であるH先生は、社会言語学の教授
の他にも「顔」を持っていました。
 
キリスト教(プロテスタント)の
「宣教師(missionary)」でもあったのです。
 
でも・・・
 
当時の私ロイは「宗教」というものに、
全くといっていいほど、興味はありませんでした。
 
まあ、今もないですが(笑)
当時は興味がない、というか、むしろ
 
「宗教トラウマがあった」
 
と言った方が正しいでしょうね。
 
中学の時には、お隣さんが、別の新興宗教の
信者さんで、ちょっと変わったことをやって
いたり・・・
 
私が高校生の時には、母親がとある新興宗教に
ハマりそうになって家族で止めたこともあり
ますし・・・
 
そもそもで言うと、「信じれば救われる」
などと主張しているのに、明らかに
 
「信者全員が救われてはいない」
 
…ということに違和感を感じるわけです。
 
しかし、そんな宗教トラウマを持った私に、
新しい考え方を見せてくれたのが
H先生だったのです。
 
当時、私は「無宗教」でした。
 
「神」の存在など、全く信じていない
わけです。
 
ある時、H先生の研究室でお茶をしている
時に、こんな話をしてくれたのです。
 
「この世界って、誰が作ったの?」
 
・・・え?
元からそこにあったんじゃないんですか?
 
質問の意図が理解できていない私に、
H先生はこんなお話をしてくれました。
 
***
 
ある時、宇宙物理学の有名な教授の部屋に
客人が訪ねて行きました。
 
そうしたら、部屋の中に
「太陽系の精巧な模型」
があったのです。
 
客人はこのように尋ねました。
 
「Wow, that’s beautiful! Who made it?」
(美しい模型ですね。誰が作ったのですか?)
 
それに対する教授の答えはこうでした。
 
「What are you talking about? It was just there.」
(何の話かね? それはただそこにあったのだよ)
 
「No, no, no. It can’t just happen to be there.
Someone must have made it.」
(いえいえ。ただそこにあったなんてありえません。
誰かが作ったに違いないです!)
 
「Then who do you think made this beautiful nature?」
(では、あなたはこの美しい自然を誰が作ったと
思うのかね?)
 
***
 
このお話はつまり、こういうことです。
 
我々は宇宙の精巧な模型を見た時には
「誰かが作った」
と思うはずです。
 
しかし、美しい自然の、例えば木々や、
太陽系の星々を見て、
「誰かが作った」
と思わないのはおかしくないか、ということ
なのです。
 
私は、このことを論理的に考えてみた時に、
答えに詰まりました。
 
なぜ、美しい模型や作品を見た時には
「誰かが作った」と思うのに、
 
美しい自然や宇宙を見た時には、
「誰かが作った」とは思わないのか……?
 
***
 
その1年後、私ロイはアメリカに留学しました。
 
そして、向こうの大学で授業を受けていて
知ったことがあります。
 
それは「日本ではサルが人間に進化した」と
習いますが、アメリカでの教え方は違った、
ということです。
 
アメリカの学校では「進化論(Evolution)」と
一緒に「創造論(Creation)」を習います。
 
当時の私の感覚では、Creation、つまり
「神さまが創った」というのは宗教でしょ?
という感じです。
 
日本の無宗教というか、ごった煮な感じから
すると、信じられませんでした。
 
でも、日本では「進化した」ことが「事実」
として語られますが、それは「進化論」、
つまり「論(theory)」でしかなく、
事実として証明されているわけではありません。
 
科学的には「Missing Link(失われた環)」が
あり、進化の証拠としては少し「飛んで」
いるんです。
 
つまり、「進化」というのは事実ではなく、
信じるか信じないか、という話だったのです。
 
***
 
それまでの私は、「神さま」というと、
宗教、つまり崇める対象だと思っていました。
 
でも、
 
「そもそも、この世界ってどうやってできたの?」
 
という質問に、答えられない自分に気づいたのです。
誰かが創った可能性を否定できないんです。
 
ちなみに、人間のDNAは、4つの塩基(ATGC)が
並んでできています。
この「遺伝子暗号」が身体の設計図になっています。
 
つまり、その設計図は、もともとただそこにあった
わけではなく、「誰かが書いた」はずなんですよ。
 
ちなみに、その設計図の作者を
「Something Great(偉大なる何ものか)」
と呼んだのは筑波大学名誉教授の村上和雄先生です。
 
崇めるかどうかは置いといて、というか、
私は別に崇めているわけではありませんし、
 
「神」や「Something Great」とやらが、
どんな存在なのかは全く分かりませんが、
 
「存在する」ということだけは、言えるのではないか
と今では思っています。
 
***
 
H先生は、こんなこともおっしゃっていました。
 
先ほどの、高名な宇宙物理学者の先生は、
「なぜ宇宙を研究するのですか?」
と尋ねられた時に、こう答えていたそうです。
 
「神さまの意思を理解するため」と。
 
まあ、「神さま」という言い方をしてしまうと、
いろんな宗教が入り込んだりして、誤解を生みやすい
のですが、「Something Great」を理解するため、
であれば、私はもっと受け入れやすく思います。
 
そして、スティーブン・ホーキング博士は、
「無神論者」らしいのですが、1988年に出した
著書の中で、こう書いていたことがありました。
 
If we discover a complete theory, it would be
the ultimate triumph of human reason – for then
we should know the mind of God.
 
(もし、宇宙の完全な理論が発見できたならば、
人間の理性の完全なる勝利である。
なぜならその時、人類は「神の御心」というものを
理解できるはずだから――。)

 
しかし、そのずっと後になって、ホーキング博士は、
このように発表していました。
 
I believe the simplest explanation is,
there is no God. No one created the universe
and no one directs our fate.

(最もシンプルな説明は、こうだと信じます。
神はいない。誰も宇宙を創造しておらず、
誰も我々の運命を決めていない)

 
一体、これはどういう意味なのでしょうか。
 
どういう考えに裏付けられていて、
そもそも「神」とか「科学」をホーキング博士は
どんな風に定義していたのか?
 
もし、できることならば直接質問して
みたかったですね。。。
 
合掌。
 
P.S.
私ロイはある時、H先生に質問をしました。
 
もし、神さまがこの宇宙を作ったならば、
その前には一体何があったんですか?
 
「何もない」
 
「時間さえもない」
 
・・・「何もない」という答えに関しては、
まあOKとしましょう。創る前ですからね。
 
でも、時間さえもない、と言われると
頭の中が「???」となりました。
 
創る前、と言っている「前後」という
概念さえもないんですか・・・?
 
もし私が、このような話を、ただ本で読んで
いるだけであれば、たぶん意味も分からずに
スッと流してしまっていたと思います。
 
でも、恩師であるH先生から直接言われた
ことで、その「問い」と向き合わされたのです。
 
「もし、時間さえもが創造物だとしたら…?」
 
何もない、と言われても、その前提として
「時間」も「空間」も存在している、
というのが普通の捉え方だと思います。
 
でも、それさえもないのです。
前提からして、全く違うかもしれないのです。
 
ちなみに、アインシュタインの「相対性理論」では、
時間の相対的だ、ということが言われています。
 
でも、それを本当の意味で理解している人って
どれだけいるのかなと思うんです。
 
「時間は相対的だ」ということを、言葉として
言うのではなく、それを「体感」として、
「確かに相対的だね」と感じられている人って、
この地球上に何人くらいいるのでしょうか…?
 


  • この記事を書いた人

    イングリッシュ・ドクター 西澤ロイ

    イングリッシュ・ドクター(英語のやさしい“お医者”さん)。
    英語が上達しない原因となっている「英語病」をなおす専門家。
    TOEIC満点(990点)、英検は4級。獨協大学英語学科を卒業。言語学を専攻。

    著書に「頑張らない英語」シリーズ(あさ出版)、新刊『英語学習のつまずき50の処方箋』(ディスカヴァー21)など、計11冊で累計17万部を突破(書籍の一覧はこちら
    日本人が「英語ができない時代」を終わらせることを目指して日々活動中。