NHKによるQueen独占インタビューの詳細&英語スクリプト(文字起こし)

 

...NHKによるQueen独占インタビューの詳細&英語スクリプト(文字起こし)


こんにちは、イングリッシュ・ドクターの西澤 ロイです。
 
本日は2018年12月17日(月)。
 
『ボヘミアン・ラプソディ』クイーンが歌う名曲の歌詞の意味を知っていますか?
という私の連載記事が、Yahoo!ニュースに掲載された
嬉しい日に、もう1つクイーン関係の嬉しいニュースが
ありました。
 
NHKの報道番組『ニュースウオッチ9』で、
・ブライアン・メイ(ギター)
・ロジャー・テイラー(ドラム)
の独占インタビューが放送されたのです。
 
それも、映画『ボヘミアン・ラプソディ』が
公開されてから世界で初のインタビュー。
 
たくさんの方がご覧になったと思いますが、
日本語の字幕だと、どうしても文字の制限があるため
彼らの真意までは伝わらなかったりします。
 
ですので、インタビュースクリプトを書き起こしたものと
私の方でつけさせていただいた日本語訳をシェアしたいと
思います。
 

なぜこの映画は多くの日本人を魅了し続けると思う?

Brian May:
I think what you see is a very good portrait of a man, very exceptional man, Freddie.
And you see his vulnerability, which is important.
You also see his strength.
And then, you see the battles that take place within him.
That I think is what the film succeeds in most.

(フレディという並外れた男が、生き生きとスクリーンに映っているからだと思います。
彼の弱さが垣間見えるのも大事なことで、同時に彼の強さも描写されています。
それから、彼自身の内側で起こる数々の葛藤も。
それが、この映画が最も成功している部分だと思います)

ちなみに、NHK訳では以下のように表現されていました。
 

フレディという並外れた人間の傷つきやすい部分や強さ、
内面の葛藤まで表現したのが映画の成功理由だと思う

 
文字数の制限があるため、「誤訳」という言葉は使いたくありませんが、
ちょっと誤解を生むと思います。
 
ブライアンが語っていたのは「映画の成功理由」ではなく、
「映画が上手に行なったこと」なのです。
 

Roger Taylor:
Apart from being a great showman and singer, but he was a great musician and composer.
And… so we wanted to make sure that that came over in the movie.

(魅せ方の本当に上手な歌手というだけでなく、音楽家としても作曲家としても素晴らしかった。
私たちはこの映画の中で、そのことがきちんと伝わるようにしたかったのです)

 
ちなみに、「come over as…」という表現はイギリス的ですね。
 
over というのは「覆う」イメージを持つ言葉。
come over ですから、「覆うような感じで来る」、
つまり「…として伝わる」という意味合いになります。
 

日本への初来日について

Roger Taylor:
In Britain, we became a bit popular.
And in America, we became a little bit popular.
But then, when we went to Japan, we were suddenly popular up here.
And it was fantastic.
And we never forget that.
The first time arriving at Haneda.

(イギリスでは少し有名になりました。アメリカではちょっとだけ有名になりました。
でもそれから日本に行ってみたら、突然、ものすごく有名だったのです。
それは素晴らしいことですし、メンバーたちは決して忘れません。
初めて羽田に着いた時のことは)

「ものすごく有名」ととりあえず訳しておきましたが、
英語では「popular up here」と言っています。
 
これは別に、こういう表現があるのではありません。
 
映像を見ていただくと分かりますが、ロジャーが
手で高さを示しているんです。
 
ですから「up here(ここまで高い)」という
言い方になっているんですね。
 

Brian May:
We did the Budokan, as you said, the very first one.
And suddenly there was this kind of heaving mass of excitement and… energy.
And it blew us away.
And I think it really propelled us to a new place.

(武道館コンサートを初めてやった時に、突然、聴衆のみなさんの興奮が膨れ上がり、
エネルギーが押し寄せてきて、僕らを吹き飛ばしました。
その経験が、私たちを新たなステージへと連れて行ってくれたのだと思います)

フレディの苦悩について

Brian May:
Sometimes it would be in writing a song where a certain conversation would get triggered
because we’re trying to channel our feelings into the song.
And a good example is “It’s A Hard Life”.

He had these feelings about a man.
I had these feeling about a woman.
We communicated a lot about the pain that we’re dealing with.

And you know, I have a beautiful mansion here.
I have a great life apparently.
But I still have the pain inside.

(曲作りの時には、曲の中に我々の感情を入れようとしますので、
時には、曲作りがキッカケとなって、ある会話が引き起こされることがあります。
その良い例が「It’s A Hard Life(イッツ・ア・ハード・ライフ)」です。

フレディはある男性に想いを持っており、私はある女性に想いがある。
我々が乗り越えないといけない痛みについてよく話し合ったものです。

美しい豪邸を所有していて、見た目には素晴らしい人生であっても、
それでも、心の内側にまだ抱えている痛みについてです)

冒頭のところについて、NHK訳では
以下のようにようなってました。
 

曲作りの段階で 自分たちの感情を
歌にいれようとしたことがある

 
これもちょっと・・・正しくない感じですね。
 
曲に感情を入れるのはいつもやることでしょうし、
それはbecause以下で表現されています。
 
sometimes がかかっているのは

Sometimes it would be in writing a song where a certain conversation would get triggered

だと解釈すべきでしょうね。
 

フレディの観客とつながる生き方

Roger Taylor:
Freddie became absolutely a master of getting this interaction.
And… so we would’ve felt at one, you know.

When he sings “We Are The Champions”, it means not “us”, we are all the champions, you know.
So it’s a great feeling of togetherness, and that’s what it’s all about, really, you know.

(フレディは間違いなく観客やファンとの心のやり取りを生むプロになりました。
だから、コンサートでみんなが一つになるのです。

「We Are The Champions(伝説のチャンピオン)」を歌う時に、weというのはバンドの我々という意味ではなく、その場にいる全員がすべて伝説の勝者だということなのです。
それは本当に素晴らしい一体感であり、それがすべてだと言っても良いでしょう)

 

Brian May:
And he’s a channel for the big show, but he’s also a channel for the emotinal content of what’s actually in the songs, which is very, very basic human.
It’s about dreams and disappointments and love and, you know, wanting to break free.

If there’s a secret to Queen, I’d say I think it’s on the basis of kind of being… being about people, and not being about rock stars.
(フレディは大きな舞台にも強かったですが、同時に、人間がもつ基本的な感情で観客とつながれました。
曲の中で歌われていたのは、夢や失望、愛、そして自由を求める心などです。

もしクイーンというバンドに何か秘訣があるとするならば、ロックスターであろうとしたのではなく、人間的であろうとしたことではないでしょうか)

 

日本語歌詞の含まれる曲「Teo Torriatte/Let Us Cling Together」について

Brian May:
I like the way Japanese people think.
You know, I like the idea of respect.

I had this desire to make a song which would express the bond that we felt with Japan.
You know the thing that held us together.

(私は日本人の考え方が好きです。
「尊重」という考え方が好きなのです。

この曲は強い想いがあって作りました。
日本に対して感じた“つながり”を表現したかったのです。
私たちをつなぎ合わせているものを)

 

今の時代について

Roger Taylor:
There’s too many borders and rules and, you know, cultural restrictions.
And I don’t believe in any of that, really.

I think we should think freely, and you know, everyone is different.
(壁や規制や文化的な制約が多すぎます。
私はそういうものを信じておりません。

みなが自由に考えられるべきだと思います。
だって、みんな違うんですから)

 

Brian May:
I am an internationalist.
And what’s going on in the world at the moment is kind of rebirth of nationalism.
With all… in my mind, with all the evils of that I really hate.

I like to build bridges, not walls.
So I hate what’s going on in America.

So I’m hoping this is just a sort of period that the world is going through, and after we’ve done this, we’ll go back to making the world one planet.
(私は国際主義者です。
現在、世界で起こっていることは、ナショナリズムの再台頭のようなものです。
私の考えでは、諸悪を含むナショナリズムであり、大嫌いです。

私は壁を作るのではなく、橋を架けたいです。
だから、アメリカで起こっていることは嫌です。

だから私が望むのは、いま世界が経験しているのが、単なる一過性の出来事であることです。
そしてそれが終わった後には、みんなが世界を1つにしようとするところに戻ることです)

 
世界を1つにする、という風に訳しましたが、
ブライアンは英語では
make the world one planet
と表現していますね。


  • この記事を書いた人

    イングリッシュ・ドクター 西澤ロイ

    イングリッシュ・ドクター(英語のやさしい“お医者”さん)。
    英語が上達しない原因となっている「英語病」をなおす専門家。
    TOEIC満点(990点)、英検は4級。獨協大学英語学科を卒業。言語学を専攻。

    著書に「頑張らない英語」シリーズ(あさ出版)、新刊『英語学習のつまずき50の処方箋』(ディスカヴァー21)など、計11冊で累計17万部を突破(書籍の一覧はこちら
    日本人が「英語ができない時代」を終わらせることを目指して日々活動中。